起業時に使える助成金

起業時には資金調達の一手段として、助成金・補助金を上手に活用することが非常に重要です。しかし、制度には「いつまで」「どの要件を満たすか」「制度が現存するかどうか」がカギとなります。本記事では、かつて「受給資格者創業支援助成金」と呼ばれた制度の現在の扱い、「中小企業基盤人材確保助成金」の最新の内容を詳しく整理。さらに、これら助成金・補助金を申請・受給する際の税理士からのアドバイスを交えて、要件・注意点・税務上・会計上のポイントを明らかにします。起業を検討している方、創業後間もない方が見落としがちなポイントを押さえておきましょう。

●受給資格者創業支援助成金(過去制度)の現状
  • この助成金は、雇用保険の受給資格者(失業者)が創業し、創業後1年以内に継続して従業員を雇用する等の要件のもと、創業費用の一部を助成する制度でした。 
  • しかし2013年3月31日をもって廃止されています。現在はこの制度そのものは使えません。
  • 廃止後は、起業・創業支援系の補助金・助成金で代替できるものを探す必要があります。自治体や国の創業助成、地域雇用開発助成金、人材確保等支援助成金などが候補。
●中小企業基盤人材確保助成金:最新の内容
  • 対象は、創業または異業種進出、あるいは生産性向上を目指す中小企業。都道府県知事の認定を受けた雇用管理の改善計画に基づき、「基盤人材」及び「一般労働者」を新たに雇い入れることが条件。
  • 助成額:基盤人材1人あたり約140万円、一般労働者1人あたり約30万円。基盤人材は最大5人まで。一般労働者も同数まで対象。地域(特定地域)や小規模事業所などでは助成額の上乗せ措置あり。
    • 受給要件の例:雇用保険の適用事業主であること。
    • 法人設立日または個人での開業日から6か月以内に改善計画認定を受けること。
    • 新分野進出等に係る施設・設備等の設置・整備にかかる費用を一定額(創業の場合 300万円以上など)負担していること。特定地域では額の変更あり。
    • 他にも、労働生産性の基準、禁止業種の除外、申請書類の提出期限などの細かな要件があります。
●補助金・助成金申請時の注意事項
  • 制度の存続・公募期間を確認すること。制度は変更・新設・廃止が頻繁で、要件や金額・助成率が改定されることがあります。
  • 原則、支給は後払い。交付決定後、実績報告や請求手続きが完了してからとなるため、初期資金をどう賄うかの資金繰りが重要。
  • 助成対象となる経費の範囲・証憑の保存が必須。契約・履行・支払い等が制度要件に合致しているか。支出のタイミング(交付決定前か後か)について制限があるものも。
  • 審査実態のチェック(計画性・整合性・実現可能性・証拠書類など)。過大な見積もりや未確定の支出は却下される可能性がある。
  • 不正受給のリスクとペナルティ。虚偽・誤表記や必要書類未提出などがあると返還・取消、将来の助成金申請が制限されることも。
  • 税務・会計処理の整備:助成金を受けた側の所得計上・経費処理・補助対象経費の時期の認定などで間違いがないように。特に創業初期は帳簿記録・領収書等の整備が不十分になりがち。
●税理士がアドバイスできること
  • 創業時にどの助成金制度が使えるか、事前に行政機関やハローワーク、商工会議所等で最新公募要項を確認し、書類準備スケジュールを立てること。
  • 中小企業基盤人材確保助成金の計画認定や設備投資要件が間に合うように、資産購入・設備投資などの支出の時期を設計すること。交付決定後/前の支出で助成対象とならないケースを避ける。
  • 助成金を受けることを前提にしたキャッシュフロー計画を立てるが、受給できないリスクも見込んでおくこと。融資や自己資金との組み合わせを想定。
  • 助成対象経費や提出書類(証拠書類・契約書・写真等)の保管・整備を徹底すること。将来の監査や税務調査で説明可能な形を整える。
  • 所得税・法人税の申告時に助成金の所得計上の要否や減価償却資産の取扱いなど、税務上の処理に誤りがないように注意すること。また、助成金をもらうことで社会保険料・雇用保険料などの基礎となる賃金の設定に影響が出ることもあるので見落とし無く。

■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行

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定額減税と確定申告

令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。

  • 定額減税の対象となる方
    定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
    (注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。
  • 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
    特別控除の額は、次の金額の合計額です。
    ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
 所得税個人住民税
本人分3万円1万円
同一生計配偶者又は扶養親族1人につき3万円1人につき1万円

詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。

●定額減税の実施方法

特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。

  1. 給与所得者に係る特別控除
    令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
    なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
    また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
    1. 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
    2. 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
    3. 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
      • 給与所得以外の所得があるとき
      • 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
      • 2か所以上から給与の支払を受けているとき
  2. 公的年金等の受給者に係る特別控除
    令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
    なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
    ※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
    (注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)
    1. 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
    2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
      (注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。

      (注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。

      (注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。

      (注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。

  3. 事業所得者等に係る特別控除
    原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
    予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
    なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
    また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
    (注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。

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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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