経営におけるリース契約

起業初期は「欲しい設備はあるが、まとまった資金がない」というジレンマに直面します。そこで有効なのがリースです。リースは、必要な機器をリース会社が購入し、起業家が月額で使用料を払う仕組み。初期費用を抑えつつ、キャッシュフローの見通しを立てやすいのが強みです。一方で総支払額は購入より高くなりやすく、中途解約の制約もあります。この記事では、リースの仕組み、メリット・デメリット、導入時の注意点を税理士の視点で整理します。
●リースとは(定義と仕組み)
  • リース会社が設備を購入し、契約期間中貸与。利用者は月額料を払い、所有権は原則リース会社に残る。
  • 契約は中途解約不可が一般的。保守・保険・原状回復などの条件は契約書で細かく定義される。
  • 対象は車両、複合機、PC、POS、医療機器等。中古や残価設定型などバリエーションもある。
  • 経理・税務は契約タイプで異なる。費用計上の時期や資産計上の有無に影響する点が重要。

▼税理士アドバイス
リースは「資金調達」と「設備調達」の合わせ技です。導入目的・使用年数・更新サイクルを先に固め、購入・借入・リースの総支払額と会計・税務の影響を横並び比較しましょう。特に解約不可期間と残価の扱いは、資金繰り表と減価償却計画に織り込むと意思決定が精緻になります。

●リースの種類
  • ファイナンスリース
    原則解約不可。実質は購入同等で、資産価値と利息相当を契約期間で回収する設計が多い。
  • オペレーティングリース
    短~中期で解約可が多い。残価見込みで月額が低め、保守込みのパッケージもある。
  • メンテナンス付
    点検・消耗品・代替機等を一体化。内部工数を外部化し運用負荷と突発費用を平準化。
  • ベンダーリース
    販売会社と提携した審査・契約。導入が速い反面、条件比較が甘くなりがち。

▼税理士アドバイス
同じ“リース”でもコスト構造と会計・税務の帰結が異なります。更新周期が短いIT機器はオペレ、長期使用の専用設備はファイナンスが好適な傾向。見積りは金利相当、残価、付帯サービスを分解し、借入+購入と同条件でNPV比較を行うと判断を誤りません。

●リースのメリット
  • 初期投資を抑え、創業初期のキャッシュを確保。自己資金を運転資金や成長投資へ優先配分できる。
  • 支払いが月額固定で資金繰りが読みやすい。季節払・スキップ払など弾力的なプランも選べる場合がある。
  • 保守・点検の外部化で管理負担と突発費用リスクを軽減。計画的な入替でダウンタイムも抑制。
  • 担保・保証人不要のケースが多く、金融機関の与信枠を温存。別の資金調達余力を確保できる。
  • 費用計上の見通しが立てやすく、損益・税負担のタイミング設計がしやすい。

▼税理士アドバイス
メリットの核心は「現金の温存」と「見通しの良さ」。ただし余剰資金を短命な出費に回さず、粗利改善に直結する用途へ配分を。売上の季節変動が大きい事業は、支払条件の弾力性(季節払・スキップ払等)の有無を確認し、月次資金繰り表で耐性を検証しましょう。

●リースのデメリット
  • 総支払額は現金購入や借入+購入より高くなりやすい。早期解約時は違約金が発生することが多い。
  • 契約期間中の仕様追加・用途変更が制限。過少スペックは機会損失、過剰スペックは固定費化のリスク。
  • 所有権がない(または移転条件が限定)。売却益や担保設定など資産活用の自由度が低い。
  • 故障・盗難等のリスク分担や保険条件を誤ると、想定外の自己負担が発生する恐れがある。
  • 会計・税務処理が複雑化する場合があり、決算の見え方や指標に影響する。

▼税理士アドバイス
デメリットの要点は「柔軟性の乏しさ」と「総額の割高」。設備が競争力の源泉なら、途中増設・入替の余地を条項で確保。金利上昇局面では固定料が保険になる一方、相場下落時は見直しが効きません。3~5年の複数シナリオで総額と損益影響を感度分析し、意思決定を数値で裏づけましょう。

■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行

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定額減税と確定申告

令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。

  • 定額減税の対象となる方
    定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
    (注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。
  • 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
    特別控除の額は、次の金額の合計額です。
    ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
 所得税個人住民税
本人分3万円1万円
同一生計配偶者又は扶養親族1人につき3万円1人につき1万円

詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。

●定額減税の実施方法

特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。

  1. 給与所得者に係る特別控除
    令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
    なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
    また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
    1. 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
    2. 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
    3. 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
      • 給与所得以外の所得があるとき
      • 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
      • 2か所以上から給与の支払を受けているとき
  2. 公的年金等の受給者に係る特別控除
    令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
    なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
    ※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
    (注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)
    1. 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
    2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
      (注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。

      (注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。

      (注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。

      (注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。

  3. 事業所得者等に係る特別控除
    原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
    予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
    なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
    また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
    (注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。

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営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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