起業時の資金調達は、事業の成否を左右する最も重要な要素です。どれだけ借り入れできるのか、適正な返済計画とは何かを理解せずにスタートすると、黒字でも資金が回らず倒産するケースも少なくありません。今回は、借入金月商倍率の考え方や倒
産企業の共通点を踏まえ、自己資金500万円・借入金300万円で飲食業を始めた場合の理想的な返済計画を解説します。
- 金融機関は「月商の3〜5倍程度」を借入可能額の目安とする傾向があります。
- 自己資金比率が高いほど、信用度が上がり借入額も増えやすくなります。
- 事業計画書に根拠ある売上・利益計画を示すことが重要です。
▼税理士のアドバイス
借入金は「返せる金額」で決めるのが鉄則です。過剰な借入は毎月の返済負担を重くし、資金繰りを圧迫します。税理士としては、まず「月商の3倍以内」「返済期間は5年以内」を一つの基準に設定し、返済余力を確認した上で金融機関と交渉することを推奨します。
- 借入金月商倍率 = 「借入総額 ÷ 月商」
- たとえば借入金300万円・月商150万円なら倍率は2倍です。
- 3倍を超えると、返済リスクが高いと判断される傾向にあります。
▼税理士のアドバイス
借入金月商倍率は、金融機関が「返済可能性」を見る指標です。倍率が高いほど返済余力が小さいと見なされます。新規開業では「2〜3倍以内」を目標に抑え、過剰債務にならないよう注意が必要です。
- 利益が出ていても資金繰りが悪化して倒産する「黒字倒産」
- 運転資金の確保を怠り、仕入・人件費の支払いが滞る
- 借入返済が先行し、設備投資や広告費に回せない
- 売上減少時に早めのリスケ(返済条件変更)をしない
▼税理士のアドバイス
倒産の多くは「資金ショート」が原因です。損益計算上は黒字でも、現金が不足すれば即破綻します。開業時は最低3か月分の運転資金を確保し、資金繰り表を常に更新して現金残高を管理しましょう。
- 初期投資:内装・設備費600万円、運転資金200万円(合計800万円)
- 売上:月商150万円、経費90万円、営業利益60万円
- 借入金300万円を5年返済なら、月返済約5.5万円程度
- 営業利益60万円から返済5.5万円を引いても、十分な余力あり
▼税理士のアドバイス
このモデルでは返済負担率(返済額 ÷ 営業利益)は約9%と健全です。月商に対する借入倍率も「2倍」と安全圏内。初期投資を抑え、運転資金を厚くする配分は理想的です。事業が軌道に乗れば、設備投資よりも販促費・人材育成へ再投資することをおすすめします。
- 返済期間:5年以内を目安に設定
- 毎月返済額:営業利益の20%以下
- 運転資金は3〜6か月分を確保
- 利益余剰分は繰上返済よりも事業拡大へ再投資
▼税理士のアドバイス
返済は「長期安定+短期完済」のバランスが大切です。初年度はキャッシュフローを優先し、資金に余裕が出てから繰上返済を検討します。金融機関との関係を良好に保つためにも、返済計画書を税理士と共有し、毎年見直す体制を整えましょう。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
当事務所では、会計ソフトの導入支援を行っています。
会計ソフトで入力なんて不安と思われる方もいらっしゃると思いますが当事務所でしっかりとサポートしますので安心してください。
実際会計ソフトを導入された方のほとんどが、ソフトを導入して良かったとおっしゃっています。
定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
所得税 | 個人住民税 | |
本人分 | 3万円 | 1万円 |
同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。

お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。