仕入と諸費用の決算調整

●仕入の決算調整が必要な場合とは

売上の場合と同様に、仕入先から商品が納品されたときに買掛帳や仕訳伝票の入力をしている場合には、決算調整を行う必要はありません。
しかし、請求日に仕入を計上している場合には、仕入先との取引条件(20日締め当月末請求の場合など)によっては、決算日までに納品されている分も仕入に計上するため決算調整を行う必要があります。売上の決算調整を参考に、決算日までに納品されている仕入を追加計上してください。

(借方)仕入高:×××(貸方)買掛金:×××

商品を注文したときに手付金や前渡金を支払った場合、この手付金や前渡金は、商品の納品が済むまで仕入に計上することができません。仕入高から前払金(資産)科目に振り替える決算調整を行います。

(借方)前払金:×××(貸方)仕入高:×××
●諸費用の決算調整が必要な場合とは

通信費や広告宣伝費などの諸経費についても、発生主義で費用計上するため、仕入と同様に決算調整を行います。

▼未払いの計上
諸費用を支払の時点で帳簿付けしている場合には、発生主義で費用計上するため、決算日の時点で未払いの金額を決算調整委する必要があります。なお決算調整にあたっては、未払金(負債)の勘定科目を使用します。未払いに計上する主な項目は次のとおりです。

  • 通信費:未払いの電話料金、携帯電話料金
  • 荷造運賃:未払いの配送料、梱包料
  • 水道光熱費:未払いの電気料金、ガス料金
  • 接待交際費:つけやクレジットカード払いの飲食代
(借方)諸費用の科目:×××(貸方)未払金:×××

▼前払金の計上
手付金や前渡金を支払った場合には、各諸費用の勘定科目から前払金(資産)の勘定科目に振り替える決算調整をします。

  • 広告宣伝費:新聞広告や折り込みチラシの制作費・掲載料などのうち、決算日までに掲載や配布が行われてないもの
(借方)前払金:×××(貸方)広告宣伝費:×××

▼前払費用の計上
家賃や損害保険料、支払利息などを翌期以降の分もまとめて支払った場合には、翌期以降の分を前払費用(資産)の勘定科目に振り替える決算調整をします。ただし、契約により1年以内の費用をまとめて前払した場合は、継続適用を条件として、支払時に費用計上することも認められています。

  • 損害保険料:1年超の期間にわたる損害保険料を支払時に費用計上している場合
(借方)前払費用:×××(貸方)保険料:×××

▼貯蔵品の計上
決算日までに使用されていない事務用品などの消耗品や切手などは、未使用の金額を貯蔵品(資産)の勘定科目に振り替える決算調整をします。ただし、毎期おおむね一定の数量を購入し、日常的に使用している場合は、継続適用を条件として、購入時に費用計上することも認められています。

  • 広告宣伝費:未配布の商品バンフレット、会社案内など
  • 旅費交通費:大量購入したタクシーチケット、回数券など
  • 消耗品費:大量購入したトナー、CD-Rなどの消耗品
  • 通信費:大量に購入した切手代など
(借方)貯蔵品:×××(貸方)諸費用の科目:×××

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改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行

電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電磁的記録(電子データ)等により、保存する時の方法について定めた法律です。

令和3年度税制改正では、電子帳簿保存法の大幅見直しが行われました。
事前申請の廃止やタイムスタンプ要件の見直し等の要件緩和が実施されるだけでなく、令和4年1月1日以後、電子取引は電子による保存が義務化となりました。これは、事業規模に係わらず企業・個人事業主が対象となります。
対応すべき範囲は想像以上に広く、早急な対策が必要です。

2021年12月10日、令和4年度税制改正大綱において、2022年1月1日に施行される改正電子帳簿保存法で「電子取引の取引情報に係る電磁的記録(PDFファイル等)」の出力書面による保存が認められないこととなっていた取り扱いを緩和する方針が示されました。
2023年(令和5年)12月31日までの2年間は、一定の要件下で引き続き電子取引を紙で保存することができるように経過措置を講ずるとのことです。
なお、一定の要件下とは、
  • 当該電子取引の取引情報を、電子帳簿保存法第7条が定める保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、やむを得ない事情があると認められること
    そして
  • 出力書面によって適切に保存していること(質問検査権に基づく書面の提示または提出の求めに応じられるようにしていること)
とされています。

参考:起業したらまっさきに読む経理の本(笠原清明著)
   株式会社インプレスコミュニケーションズ

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