保険料を全額経費にできない節税保険に規制

●解約返戻率カが50%を超える保険に規制が入った

「法人向けの保険商品に加人して節税」
経営者なら誰しもが耳にしたことがあるのではないでしょうか。いわゆる「節税保険」と呼ばれ、保険料を支払うとその何割かを経費にでき、節税になるというものです。反対に、保険を解約して解約返戻金を受け取ると課税されるため、単なる「課税の繰り延べ」となります。ところが、解約返戻金を受け取る際、退職金など多額の経費を発生させることで、「解約返戻金への課税を回避する」というスキームが横行しました。
節税保険は「多額の損金算入。実質返戻率100%以上。」などという触れ込みで販売され、一時は保険市場の%のシェアを占めていたといわれるほど人気がありましたが、過度の節税や保険会社の販売競争の過激化を問題視され、2019年の規制改正により規制されたというわけです。これまでの節税保険のしくみを整理してみましょう。

  1. 中途解約を前提に、解約返戻率が80%を超える保険に加入
  2. 保険料を支払った時に経費とすることで利益を圧縮し、法人税等を減額させる
  3. 解約のタイミングに合わせて多額の経費を計上し、解約返戻金と相殺

解約返戻率が高い保険商品ほど多額の経費を計上できるため、節税対策として人気があったわけです。しかし、今回の改正により、最高解約返戻率が50%を超える定期保険(逓増定期保険、長期平準定期保険など)と第三分野商品(医療保険、がん保険など)の2種類が、規制対象になりました。
ピーク時の解約返戻率か50%を超える保険商品は、支払った保険料の一部を会社の資産として計上をしなければならず、保険料の全額を経費にできなくなったのです。一部を資産として計上するため、解約返戻金が戻ってきたタイミングにおける課税額は少なくなるものの、突発的な利益が生じたときに「課税の繰り延べ」をしたい会社にとっては痛手となる規制といえるでしょう。
一方で、資産計上後に一定期間を経過すると、資産計上額の取り崩し(経費化)が認められるので、長期的に考えると「課税の繰り延べ」の恩恵を受ける余地はあるといえます。

●定期保険の4つの区分と概要
最高解約返戻率資産計上期間資産計上額取リ崩し期間※1
50 %以下全額
50%超~70%以下※2保険期間開始から40%を経過するまで支払った保険料
の40%(残りの60%は損金計上)
保険期間開始
から75%経過後、保険期間終了の日まで
70%超~85%以下保険期間開始から40%を経過するまで支払った保険料
の60%(残りの40%は損金計上)
保険期間開始
から75%経過後、保険期間終了の日まで
85%超保険期間開始~最高解約返戻率を迎える期間等まで年間支払保険料×最高解約返戻率×90%(10年目まで)解約返戻金相
当額が最も高い金額となる期間等経過後から、保険期間の終了の日
年間支払保険料×最高解約返戻率×70%(11年目以降)解約返戻金相
当額が最も高い金額となる期間等経過後から、保険期間の終了の日

※1)残リの保険契約期間の年数に応じて、均等に分けること
※2)1年間に支払った保険料が30万円以下の場合は全額を損金に計上

支払い時に全額損金処理できる金額が少なくなった
●名義変更プランも規制の対象になった

かっては法人名義の保険を個人名義に切り替えて所得税を抑える「名義変更プラン」もありました。「解約返戻金相当額で法人から個人に名義変更」、「解約返戻金のピークで解約し、一時所得の恩恵を受ける」。この2点が名義変更プランのポイントですが、具体的には次のようなしくみとなっています。

  1. 法人で低解約型逓増定期保険に加入する
  2. 解約返戻金の価格が低いときに解約返戻金相当額を支払い、法人から個人に名義変更(売却)をする
  3. 名義変更をした後、解約返戻金のピークで解約し、個人で一時所得の控除を受ける

これまでは、法人から個人への名義変更時に低額の解約返戻金相当額を法人に支払いさえすれば、個人として一時所得の恩恵を受けながら解約返戻金を受け取ることができました。しかし、改正により名義変更時にはピーク時の解約返戻金で名義変更(売却)」しなけれはならないとされ、個人から法人に多額の金額を支払う必要が出てきたため、実質的に名義変更プランにも規制がされたといえます。保険加人は慎重に行いましょう。

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インボイス制度(適格請求書等保存方式)2023年10月1日開始

令和5年(2023年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます。適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

  • 適格請求書(インボイス)とは
    売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
    具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
  • インボイス制度とは
    <売手側>
     売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
    <買手側>
     買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
    ※買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

■参考書籍■
【新版】本当使える節税の本(社長、そんな節税ではあとがコワイです!)
冨田健太郎/葛西安寿 箸
株式会社自由国民社 発行

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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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