起業時には「資金調達」だけでなく、融資審査や税務調査に備えた経理書類の保存体制も重要です。会社設立直後は帳簿や証憑管理が後回しになりがちですが、法人税法や会社法などで保存義務や保存年数が定められています。適切な保存を行うことで、金融機関からの信用向上や税務リスクの軽減にもつながります。今回は、企業経営で必要となる経理関連書類の保存年数や根拠法令について、具体例を交えて解説します。
- 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書などの決算書は、会社法第435条に基づき10年間の保存義務があります。具体例として、決算報告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書などが該当します。
- 法人税申告書や別表関係書類も法人税法により7年間の保存が必要です。金融機関から融資を受ける際には、過去3〜5期分の決算書提出を求められるケースが多くあります。
▼税理士のアドバイス
会社設立後の企業では、決算書は単なる税務資料ではなく「信用資料」として扱われます。特に資金調達では、利益推移や自己資本比率を金融機関が重視するため、紙・PDFの両方で整理保存しておくことをおすすめします。
- 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳などの会計帳簿は、会社法第432条および法人税法により7年間の保存義務があります。欠損金の繰越控除を受ける場合は10年間必要となるケースがあります。
- 会計ソフトのデータも帳簿保存の対象です。具体例として、弥生会計やfreee、マネーフォワードの仕訳データや補助元帳データなどが該当します。
▼税理士のアドバイス
近年はクラウド会計を利用する企業が増えていますが、データ消失や解約による閲覧不可リスクもあります。定期的にPDFやCSV形式でバックアップを取得し、外部保存しておくと安心です。
- 通帳、銀行取引明細、当座勘定照合表、借入返済予定表などは法人税法に基づき7年間保存します。資金移動の根拠資料として税務調査時に確認される重要書類です。
- インターネットバンキング利用企業では、Web明細のダウンロード保存も必要です。具体例として、振込履歴PDF、入出金CSVデータなどが該当します。
▼税理士のアドバイス
金融機関のWeb明細は一定期間で閲覧不可になる場合があります。企業では毎月ダウンロードし、年月別フォルダで整理しておくことで、税務調査や融資資料提出時に迅速に対応できます。
- 株券、社債関連書類、投資信託報告書、有価証券売買報告書などは法人税法上7年間の保存が必要です。資産計上や評価損益確認の根拠となります。
- 具体例として、株式購入契約書、証券会社の年間取引報告書、配当金計算書などが該当し、税務上の取得価額確認資料として使用されます。
▼税理士のアドバイス
資金運用を行う企業では、有価証券の取得時期や取得価額が重要になります。証券会社の電子交付資料は後日取得できない場合もあるため、PDF保存を徹底することが大切です。
- 請求書、領収書、納品書、契約書、見積書などの取引証憑は法人税法により7年間保存します。売上・経費の実在性を証明する重要書類です。
- 電子メール添付の請求書やPDF領収書も保存対象です。電子帳簿保存法に対応する場合は、検索機能や改ざん防止措置が必要となります。
▼税理士のアドバイス
会社設立後の企業では、領収書紛失による経費否認リスクが少なくありません。紙保存だけでなく、スキャン保存やクラウド管理を併用すると、管理効率と証憑保全の両立が可能です。
- 適格請求書(インボイス)、帳簿、課税売上関連資料は消費税法に基づき7年間保存が必要です。インボイス制度開始後は登録番号確認も重要となっています。
- 具体例として、適格請求書発行事業者の請求書、仕入税額控除対象帳簿、簡易課税判定資料などが該当します。
▼税理士のアドバイス
インボイス制度では、請求書の保存漏れが仕入税額控除否認につながります。企業では取引先登録番号の確認と、電子保存ルール整備を早めに進めることが重要です。
- 給与台帳は所得税法および労働基準法により7年間保存が必要です。具体例として、賃金台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書などがあります。
- 社会保険関連では、算定基礎届や月額変更届、労働者名簿なども保存対象となります。労働基準法では原則5年間保存義務があります。
▼税理士のアドバイス
給与関連資料は税務調査だけでなく、労基署調査や年金事務所調査でも確認されます。マイナンバー管理を含め、アクセス制限や保管場所のルール化をおすすめします。
- 電子帳簿保存法では、電子取引データを紙印刷のみで保存することは原則認められません。PDFやメールデータを電子保存する必要があります。
- 会社設立後の企業では、資金調達時に金融機関から「試算表」「資金繰り表」「借入一覧表」などの提出を求められることも多く、整理保存が重要です。
▼税理士のアドバイス
経理書類の保存は「税務対策」だけではなく、「企業信用」を高める経営管理の一部です。日頃から整理された経理体制を構築することで、融資審査や補助金申請にも有利になります。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
