税理士やテサイナーに報酬を支払う

税理士や弁護士、デザイナーなどに報酬を支払うとき、会社は給料やポーナスを支払うときと同様に、所得税を源泉徴収する必要があります。源泉徴収が必要な報酬は、たいへん範囲が広く、こんな報酬にも源泉徴収が必要だった…と思われるものもたくさんあります。
例えば、社内の勉強会に外部講師を招き講演をしてもらった、ホームページのデザインをしてもらった…などのために支払う報酬は、源泉税の対象になります。
源泉徴収して報酬を支払うことは、会社の義務なので源泉徴収をしないで支払った報酬が税務署の調査で発見されると、会社は「源泉徴収すべき金額」を税務署に納めなければなりません。徴収漏れをしないよう、源泉徴収が必要な報酬の範囲を押さえておきましょう。

●経理処理のホイント
源泉徴収が必要とされる主な報酬と税率は次のとおりです。

区分具体例源泉税の額
原稿の報酬原稿料、監修料、標語や文の懸賞の入賞金1回の支払金額のうち
100万円以下の金額…10%
100万円を超える金額…20%
デザインの報酬工業デザイン、広告デザイン、展示会等の展示装飾
講演の報酬講演にかかる講師の謝金
教授・指導料技芸、スポーツ、知識等の教授・指導料
翻訳の報酬翻訳の料金
専門家の報酬弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士の報酬
コンサルタントの報酬中小企業診断士、経営コンサルタントの報酬
建築士の報酬設計、工事管理、調査、鑑定の報酬
不動産鑑定士の報酬不動産の鑑定評価の報酬
司法書士の報酬登記書類の作成など(報酬の金額-10,000 円)×10%
外交員の報酬歩合制のセールスマンや外交員の報酬(報酬の金額-120,000 円)×10%
広告のための賞金広告や宣伝のための賞金(商品券や中など物品を含む)(報酬の金額-500,000 円)×10%

源泉徴収が必要とされる報酬の範囲は、国税庁の「源泉徴収のあらまし」という手引きに詳しく掲載されています。この「源泉徴収のあらまし」は、税務署で無料配布していますので、1冊手に入れておくと良いでしょう。忙しくて税務署に行けない方は、国税庁のホームページからダウンロードして入手することもできます。
(国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm#a-03 「パンフレット・手引き」→ 「源泉所得税関係」→「源泉徴収の
あらまし」)

手引きの「第五報酬・料金等の源泉徴収事務」のところに、源泉徴収が必要とされる報酬の一覧表が掲載されています。源泉徴収が必要な報酬の範囲はたいへん広いので、ぜひ一読して、皆さんの会社で支払をする報酬について、源泉徴収の義務があるか、ないか、確認をしておきましよう。特に次の業種を営んでいる会社は源泉徴収の義務のある報酬を支払うことが多いので注意が必要です。

デザイン、設計、出版、芸能、イベント、広告代理店、コンサルタント、バー・キャパレー、翻訳、不動産業など

●経理処理のホイント
報酬の支払は「支払手数料」などの勘定科目で次のとおり経理処理をします。源泉徴収した所得税の金額は、「預り金」勘定で経理処理をします。デザイナーのYさんへ支払った広告デザイン料を例に、仕訳について具体的に説明します。

  • 源泉税の金額について
    支払金額が100万円を超えているので、次のように計算します。
    • 100万円以下の金額 100万円×10%=10万円
    • 100万円超の金額 (150万円-100万円)×20%=10万円
    • 源泉税の金額 10万円+10万円=20万円

このように仕訳をしましょう。

(借方)広告宣伝費 1,500,000(貸方)現金 1,300,000
 (貸方)預り金 200,000

●税務署はここをチェックする
源泉徴収は、会社の義務であることをしっかりと認識しておきましょう。たとえばデザイナーさんから源泉税を差し引いていない請求書が届いて、それに従って報酬を支払ったようなケースでも、税務署は、源泉税を徴収する義務を怠ったとして、会社に追徴課税をします。最近の税務調査では、源泉税の調査に重点が置かれる傾向にあります。徴収漏れがないよう注意しましょう。

●節税のポイント
報酬の請求書に消費税の金額が別立て表示されている場合には、報酬の本体価額のみを源泉徴収の対象とすることができます。

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改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行

電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電磁的記録(電子データ)等により、保存する時の方法について定めた法律です。

令和3年度税制改正では、電子帳簿保存法の大幅見直しが行われました。
事前申請の廃止やタイムスタンプ要件の見直し等の要件緩和が実施されるだけでなく、令和4年1月1日以後、電子取引は電子による保存が義務化となりました。これは、事業規模に係わらず企業・個人事業主が対象となります。
対応すべき範囲は想像以上に広く、早急な対策が必要です。

2021年12月10日、令和4年度税制改正大綱において、2022年1月1日に施行される改正電子帳簿保存法で「電子取引の取引情報に係る電磁的記録(PDFファイル等)」の出力書面による保存が認められないこととなっていた取り扱いを緩和する方針が示されました。
2023年(令和5年)12月31日までの2年間は、一定の要件下で引き続き電子取引を紙で保存することができるように経過措置を講ずるとのことです。
なお、一定の要件下とは、
  • 当該電子取引の取引情報を、電子帳簿保存法第7条が定める保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、やむを得ない事情があると認められること
    そして
  • 出力書面によって適切に保存していること(質問検査権に基づく書面の提示または提出の求めに応じられるようにしていること)
とされています。

参考:起業したらまっさきに読む経理の本(笠原清明著)
   株式会社インプレスコミュニケーションズ

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