従業員の給与を上げて法人税等を控除する

2022年4月1日以降開始事業年度より適用が開始した「賃上げ促進税制」。これは、従業員の賃上げに積極的に取り組む企業をサポートする税額控除税制です。2022年3月31日開始事業年度までは、「所得拡大促進税制」がありましたが、この内容が拡充され、賃上げ促進税制に変わりました。これらの制度は
、「租税特別措置法」という期間限定の法律(時限立法)によって定められているため、毎年のように要件や控除額が変わります。また大企業と中小企業では、要件などが異なるので注意が必要です。
ここでは、中小企業向けの賃上げ促進税制を解説します。

●賃上げ促進税制の概要

賃上げ促進税制とは、従業員の給与などを前年度より一定以上アップさせると、その増加額の15%~30%を年間の法人税額から控除できる制度です。従業員給与の増額は会社にとって負担の大きいコストですが、会社が成長するため
には欠かせない人材への投資です。税額控除を利用できれば、その分だけ税金の負担を軽減することが期待できます。さらに教育訓練費の増加の要件も満たすと、10%の税額控除額を上乗せすることができます。従業員のキャリアア
ップ、スキルアップのための研修等を実施することで、中長期的な人材育成をしながら税金も安くなる、というお得な制度です。
全ての要件を満たした場合、増加した給与等の最大40%相当の税金を下げる効果が期待できるでしょう。

中小企業の賃上げ促進税制の控除率
 適用要件控除率
通常要件雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加15%
上乗せ要件①雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加+15%
②教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加+10%

出所:経済産業省「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック」より

●適用対象となる法人

賃上げ促進税制は、青色申告書を提出する法人が、次のいずれかに該当する場合に、適用を受けることができます。

  • 資本金や出資金が1億円以下の法人(同一の大規模法人から2分の1以上の出資、2分の1以上の大規模法人から3分の2以上の出資、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人を除く)
  • 資本金等を有しない法人で常時雇

    用人数が1000人以下の法人

  • 常時雇用の従業員が1000人以

    下の個人事業主

  • 協同組合など

●通常の適用要件

賃上げ促進税制が適用されるには、「雇用者給与等支給額」が前年度と比べて1.5%以上増加していることが求められます。増加額の15%を法人税額から控除できます。雇用者給与等支給額とは、国内雇用者に対する給与や賞与などをいい、正社員、パート、アルバイト、日雇い労働者などに対するものを含み、助成金などがあればそれを差し引いて計算します。
また役員や役員の親族に対する給与なども除外する必要があります。既存の従業員の給与などを上げて増加率を満たしても、新規で雇用して総人件費を増加させて増加率を満たしても、どちらの方法でも構いません。

●2種類の上乗せ要件

通常の15%の控除に加えて、次の要件を満たすと、更に控除率がアップします。
上乗せ要件①:雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加→控除率15%アップ
上乗せ要件②:教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加→控除率10%アップ

●税額控除額の上限

控除額は、法人税額の%が上限です。
控除可能額が法人税額の%以上になった場合、超える部分の金額は切り捨てられます。控除可能額を翌年に繰り越すことはできません。

●決算を迎える前に要件の確認をする

制度の適用は、まず前期と比較して給与等が15%以上増加しているかどうかが肝心です。決算を迎える前に、給与の増加率がどの程度か試算してみるとよいでしょう。もし「ほんの少しだけ足りない」といった場合には、期末までに賞与を支給するなどして、増加率要件を満たすことも可能です。
賃上げ促進税制は税額控除制度のため、赤字の会社には導入のメリットはありません。いくら給与等が上がっていても法人税の納税がなければ、節税する必要がないのです。
また給与等を一度上げると、そのあと下げることは容易ではありませんし、社会保険料等の負担も増えます。「当期の税金を減らすために賃金を上げよう」という安易な考えは禁物です。経営計画や資金繰りなどの中長期的な目線から、賃上げを検討しましょう。

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インボイス制度(適格請求書等保存方式)2023年10月1日開始

令和5年(2023年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます。適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

  • 適格請求書(インボイス)とは
    売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
    具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
  • インボイス制度とは
    <売手側>
     売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
    <買手側>
     買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
    ※買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

■参考書籍■
【新版】本当使える節税の本(社長、そんな節税ではあとがコワイです!)
冨田健太郎/葛西安寿 箸
株式会社自由国民社 発行

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営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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