合計残高試算表の仕入高勘定の残高欄を見てください。この欄の金額は、皆さんの会社の期首から決算日までの商品の仕入金額を累計した金額です。
仕入れた商品が、期首から決算日までに全部売れているならば、決算調整をする必要はありません。売れた商品=仕入れた商品、つまり売上に対応する仕入が費用として計上されているからです。費用収益対応の原則を思い出してください。
在庫商品がある場合には、「売れた商品の仕入代金」と「在庫商品の仕入代金」が仕入高勘定に混在しています。「在庫商品の仕入代金」は売上に対応する費用ではありません。
そこで、決算調整をして仕入高からマイナスする必要があります。
在庫商品の決算調整は、期末商品棚卸高という勘定科目を使用して経理処理をします。仕入高の勘定科目から直接マイナスすることはしません。
(借方)商品:××× | (貸方)期末商品棚卸高:××× |
なお翌期首には、在庫商品を費用に戻すため、次の仕訳を行います。
(借方)期首商品棚卸高:××× | (貸方)商品:××× |
在庫商品の決算調整の結果は損益計算書には次のとおり表示されます。
決算 には会社やお店にある商品を実際に数え、どんな商品が何個あるのか、把握します。この作業のことを 「実地棚卸」といいます。実地棚卸で把握した商品名とその数量は「棚卸表」といわれる書類に記入します。
実際に数えとさらりと書きましたが、実地棚卸の作業は、ダンポール箱の中や陳列棚に置いてある商品を1つ1つ数えるのですから、たいへん手数がかかります。特に商品数の多い小売業や卸売業では、本当に大変だと思います。よく社長さんから「面倒なので、なんとかならないか」と言われることがあります。
しかしこればかりは、きちんとやっていただくしかありません。さきほど説明したとおり、在庫を把握しなければ、正しい利益を計算できないのです。
在庫商品を数えるとき気をつけたいのが、「思わぬところにある商品」の存在です。例えば、次のようなところにある商品も会社の在庫商品です。数え漏れのないようにしてください。
- 仕入先の工場や配送業者の倉庫に預けてある商品
- 倉庫から店、あるいは店から店に移動するため、輸送中の商品
- 得意先に販売を委託している商品
税務署の調査においても、在庫商品の上漏れがないか厳しくチェックされます。期末在庫を意図的に少なくし、利益を隠す手口があとをたたないからです。調査官は、商品の納品や出庫の状況から棚卸表の数量が正しいか確認します。
正しい利益を計算するためにも、税務署から追徴処分を受けないためにも、きちんと棚卸の作業を行うようにしましょう。
棚卸表に在庫商品の数を記入したら、次に各商品の単価を記入します。商品の単価とは、その商品の仕入値のことです。仕入値が変動している場合、どの値段を単価とするのか、という問題が生じます。例えば次のケースで考えてみましょう。
4/4:5個を100円、8/9:2個を120円、3/10:3個を110円で仕入れ、決算日(3/31) 現在4個が売れ残っている
平均の仕入値を単価にするという考え方があります。単価は107円になります。
(5個×100円+2個×120円+3個×110円)÷10個=107円
先に仕入れたものから順番に売れるという考え方があります。単価は112.5円になります。
(1個×120円+3個×110円)÷4個=112.5円
最初の考え方を総平均法、2番目の考え方を先入先出法といいます。他にもさまざまな考え方がありますが、小さな会社でよく使われているのは、最終仕入原価法という考え方です。この方法は、とにかく最後の仕入値を単価にするというかなり割り切った考え方です。なぜ小さな会社で使われているかというと、手間がかからないからです。
さきほどのケースでは、3/10の仕入値、110円が単価になります。簡単でしょう。説明に計算式も必要ありません。税務署への届出については棚卸資産の評価方法の届出書を参照してください。
なお商品の仕入値は、引き取り運賃などの付随費用を含むこと、税込経理の場合は税込、税抜経理の場合は税抜きの金額になることに注意してください。
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改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電磁的記録(電子データ)等により、保存する時の方法について定めた法律です。
令和3年度税制改正では、電子帳簿保存法の大幅見直しが行われました。
事前申請の廃止やタイムスタンプ要件の見直し等の要件緩和が実施されるだけでなく、令和4年1月1日以後、電子取引は電子による保存が義務化となりました。これは、事業規模に係わらず企業・個人事業主が対象となります。
対応すべき範囲は想像以上に広く、早急な対策が必要です。
2023年(令和5年)12月31日までの2年間は、一定の要件下で引き続き電子取引を紙で保存することができるように経過措置を講ずるとのことです。
- 当該電子取引の取引情報を、電子帳簿保存法第7条が定める保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、やむを得ない事情があると認められること
そして - 出力書面によって適切に保存していること(質問検査権に基づく書面の提示または提出の求めに応じられるようにしていること)
参考:起業したらまっさきに読む経理の本(笠原清明著)
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