会社設立直後の企業では、売上拡大や資金調達ばかりに意識が向きがちですが、日々の現金管理も重要な経営課題です。現金管理が曖昧になると、不正や使途不明金、税務調査時の指摘につながる可能性があります。今回は、起業時から実践したい現金管理のポイントについて、税理士の視点を交えながら解説します。
- 会社設立後は、事業用口座と個人口座を必ず分け、企業活動の資金の流れを明確にすることが重要です。個人利用と混在すると経費判定が難しくなり、会計処理や税務申告にも支障が生じます。
- 事業資金を個人的な支払いに利用すると、役員貸付金や仮払金として処理が必要になる場合があります。経営状況の把握を正確に行うためにも、現金の区分管理が必要です。
▼税理士のアドバイス
起業直後は資金繰りが不安定なため、個人資金を会社へ立て替えるケースも少なくありません。しかし記録を残さないまま運用すると、税務調査時に使途不明金として指摘される可能性があります。会社設立時点で専用口座と会計ルールを整備し、資金の流れを可視化することが重要です。
- 企業で保管する現金額には上限を設け、必要以上の現金を社内に置かないことが大切です。盗難や紛失リスクを抑え、安全な資金管理につながります。
- 小口現金制度を導入し、一定額を超えた場合は速やかに預金口座へ入金する運用を徹底すると、現金事故や不正利用の防止効果が高まります。
▼税理士のアドバイス
現金が多い企業ほど、帳簿残高と実際の残高が合わなくなるリスクが高まります。特に起業初期は管理体制が未整備な場合も多いため、小口現金を最小限に抑え、可能な限り振込やキャッシュレス決済を活用することをおすすめします。
- 現金管理を複数人で曖昧に運用すると、責任所在が不明確になり、ミスや不正の原因になります。現金管理責任者を定め、管理体制を一本化することが重要です。
- 担当者が日々の入出金を確認し、現金残高を管理することで、経営者も企業の資金状況を把握しやすくなります。
▼税理士のアドバイス
会社設立直後は少人数経営が多く、経営者自身が現金管理を兼務するケースもあります。しかし、将来的な内部統制を見据え、早い段階で責任者を明確にしておくことが重要です。管理ルールを整備しておくことで、従業員増加時もスムーズに対応できます。
- 交通費や立替経費の精算期限、申請方法、必要書類などを明確に定めることで、企業の現金管理が安定します。ルールが曖昧だと不正請求の温床にもなります。
- 精算時には申請書と領収書をセットで提出する運用を徹底し、経費の透明性を確保することが重要です。
▼税理士のアドバイス
精算ルールが統一されていない企業では、経費計上漏れや二重精算が発生しやすくなります。会社設立時から申請期限や承認フローを定め、証憑保存を徹底することで、税務調査時の説明もしやすくなります。
- 現金支払いを行う際は、必ず請求書や領収書などの証憑書類を確認したうえで支払うことが重要です。証憑がない支出は経費として認められない場合があります。
- 支払い内容や取引先情報を記録することで、企業の経理処理が適正化され、不透明な支出を防止できます。
▼税理士のアドバイス
税務上、領収書や請求書は経費の根拠資料となります。証憑が不足していると、経費否認や追徴課税につながる可能性もあります。会社設立後は書類保存ルールを整え、電子保存制度への対応も検討すると効率的です。
- 現金の入出金を日々記録する現金出納帳は、企業の現金管理に欠かせない帳簿です。記録を残すことで、資金の流れを正確に把握できます。
- 記載漏れや記録遅れを防ぐため、入出金発生時にその都度記帳する運用を徹底することが大切です。
▼税理士のアドバイス
現金出納帳は税務調査時にも確認される重要書類です。残高不一致が頻発すると、帳簿全体の信頼性が低下する可能性があります。会計ソフトを活用し、銀行口座やレシート管理と連携させることで、企業の経理負担軽減にもつながります。
- 毎日の業務終了時に帳簿残高と実際の現金残高を照合することで、不一致を早期に発見できます。小さな差異でも放置しないことが重要です。
- 日々の確認を継続することで、現金事故や入力ミスの防止につながり、企業全体の管理精度向上にも役立ちます。
▼税理士のアドバイス
起業直後の企業では、業務優先で確認作業が後回しになりがちです。しかし、現金残高確認を習慣化することで、不正防止だけでなく資金繰りの把握にも役立ちます。経営判断の精度向上にもつながる重要な業務です。
- 定期確認だけでなく、抜き打ちで現金残高を確認することで、不正抑止効果が高まります。内部牽制の仕組みとして有効です。
- 経営者や管理責任者が随時確認を行うことで、現金管理への意識向上につながり、企業全体の統制強化にも役立ちます。
▼税理士のアドバイス
現金不正は「管理が甘い会社」で発生しやすい傾向があります。会社設立時から定期監査や抜き打ち確認を取り入れることで、内部統制の強化につながります。小規模企業ほど経営者自身が確認に関与することが重要です。
- 現金取引を減らし、振込やキャッシュレス決済を活用することで、企業の現金管理負担を軽減できます。記録も自動化しやすくなります。
- 会計ソフトやクラウドサービスを導入し、資金管理をリアルタイムで把握できる体制を整えることも、会社設立時には重要なポイントです。
▼税理士のアドバイス
企業経営では「利益」だけでなく「手元資金」の管理が極めて重要です。起業時から資金管理ルールを整備することで、金融機関からの信用向上にもつながります。税理士と連携しながら、継続的な管理体制を構築することをおすすめします。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
