損金になるものならないもの

会計の費用と税務の損金は一致するものがほとんどですが、なかには異なるものもあります。これらの判断にあたっては、領収書や請求書等に記載されている名称や会計上の勘定科目ではなく、取引の実態などをみて判断する必要があります。

●不一致が生じる代表例
  1. 交際費等および寄附金
    交際費等とは、取引先などの事業関係者に対する接待や贈答などの行為にかかる支出をいい、寄附金とは、金銭や経済的利益の無償の供与をいいます。税務上、どちらにも損金算入限度額が定められており、限度額を超えたところからは損金となりません。
    上限なく交際費等や寄附金の損金算入を認めてしまうと、儲かる企業が多額の交際費等や寄附金を計上して、不当に税負担を免れる可能性があるため、このような制度が設けられています。
  2. 員報酬・役員賞与
    役員報酬は、社長自身が自分の給与を決めることができるため、会社の利益操作に使われやすい費用です。たとえば、期末が近付いてきたときに「今年は利益が5000万円もでるから、その分社長に特別ポーナスを出そう!」などといって役員報酬が損金となってしまうと、国としてはたまりません。
    そこで、会社が好きなように役員報酬を改定して、法人税の負担を不当に免れたりすることのないように、税法上のルールか厳しく定められています。
    役員報酬を損金とするためには、「毎月同額でなければならない」などの要件を守りながら、役員報酬を決定する必要があります。

  3. 法人税や住民税は損金になりません。また、延滞税や加算税などのペナルティも損金となりません。
  4. 価償却費
    固定資産を購入した場合、その全額を購入した事業年度の費用とすることは原則できず、資産の種類ごとに定められた耐用年数に応じて毎期少しずつ費用化します。税務のルールに従って、会計の減価償却費を計上することが一般的ですが、会社独自の償却ルールや国際会計基準などを採用している場合は、会計と税務で乖離が生じます。
    たとえば、100万円の固定資産を購入し社内独自ルールの2年で償却し、50万円を減価償却として計上したとします。一方、税務上の耐用年数は5年であったとすると、税務上の償却限度額は20万円となります。その結果、償却限度額を超えた部分である30万円については損金にならないということになります。減価償却については、く紹介します。
  5. 引当金繰入

    引当金とは、将来発生する費用のうち、当期に帰属する金額を見積もって、その概算額を当期の費用とするものです。
    会計上は、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金、ポイント引当金などさまざまなものがあり、業界独自の引当金を設定することもあります。
    税務上は、引当金のような概算経費を損金とすることには非常に慎重です。貸倒引当金などごく一部しか認められておらず、要件や計算方法も厳しく定められています。
    税務上の要件を満たさない引当金や、税務に定めのない引当金は、その繰入額が損金不算人となります。

  6. 期ズレ
    「期ズレ」とは、売上や経費などが計上されるべき年度とは違う年度で計上することです。支払いが期をまたいでしまう場合は、会計上、期末に未払金を計上し、当期の費用として処理します。このような費用が税務上も損金となるかどうかは、個別に検討する必要があります。税務上の販売費および一般管理費は、債務確定基準によって損金算入が可能かどうかを判断します。債務確定基準とは、次の3つの要件を期末までにすべて満たすものをいいます。
    • 債務が成立している
    • 具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
    • 金額を合理的に算定できる

    これらすべての要件を満たした場合、損金とすることかできますが、そうでない場合は、概算経費のような扱いになり、損金不算入となります。
    税務のほうが会計よりも損金化に慎重であり、タイミングが遅くなることがよくあります。

  7. 評価損
    物価変動や市況の変化などによって、棚卸資産や有価証券、固定資産などが取得した当初よりも価値が下がった場合、会計上「評価損」を計上することがありますが、税務上認められる評価損はごく一部に限定されています。
    たとえば、棚卸資産や固定資産であれば、災害等によって著しく損傷した場合などには損金とすることができますが、物価変動等によるものは損金とす
    ることができません。
    以上のようなものは、費用と損金の不一致が生じる代表例です。不一致になるもののほうが
    、一致するものよりも数が少ないため、不一致になるものを覚えておけば問題ありません。「税務(損金)のほうが、会計(費用)よりも損金の認識基準が厳しい」と覚えておくとわかりやすいでしょう。

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インボイス制度(適格請求書等保存方式)2023年10月1日開始

令和5年(2023年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます。適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

  • 適格請求書(インボイス)とは
    売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
    具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
  • インボイス制度とは
    <売手側>
     売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
    <買手側>
     買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
    ※買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

■参考書籍■
【新版】本当使える節税の本(社長、そんな節税ではあとがコワイです!)
冨田健太郎/葛西安寿 箸
株式会社自由国民社 発行

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営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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