社内の不正は、現金の着服や経費の水増し、架空の取引など、企業の規模を問わず発生する可能性があります。被害は金銭的な損失にとどまらず、取引先からの信用低下や従業員の不安にもつながります。健全な会社経営を続けるには、担当者への信頼に加えて、不正を起こしにくくする仕組みと、異常を早期に発見する体制が欠かせません。今回は、中小企業でも取り組みやすい不正防止のポイントを、経理実務を中心に解説します。
- 長年勤めている従業員や、経営者が信頼している担当者であっても、業務を一人に任せきりにすることは避けましょう。入出金、記帳、残高確認を同じ人が行うと、誤りや不正に気づきにくくなります。人への信頼と業務の確認は、分けて考えることが大切です。
- 不正による損失は、着服された金額だけではありません。原因の調査や取引先への説明、会計処理の訂正などに時間と費用がかかり、通常業務にも影響します。企業の資金と信用を守るためには、問題が起きてから対応するより、日頃から予防に取り組むことが重要です。
- 承認手順や確認方法を明確にすることは、従業員を守ることにもつながります。誰が申請し、誰が承認したかを記録しておけば、問題が発生した際に事実関係を確認しやすくなります。責任の所在が曖昧なまま、特定の担当者だけが疑われる状況も避けやすくなります。
▼税理士のアドバイス
まずは、現金管理、経費精算、振込、売上計上について、誰が作業し、誰が確認しているかを書き出しましょう。少人数の企業では、すべての業務を分担する必要はありません。振込の最終承認や預金残高の確認など、資金に直結する部分に経営者の確認を組み込むことが現実的です。顧問税理士との月次確認では、帳簿の数字だけでなく、証憑や入出金との整合性も確認することが大切です。
- 支払業務では、申請、承認、振込の実行を可能な範囲で分担します。例えば、担当者が振込データを作成し、経営者が請求書と振込先を確認して承認する方法です。請求書の存在だけで判断せず、実際に商品やサービスを受け取ったかも確認することが大切です。
- 経費精算は、対象となる費用、必要な証憑、承認者を社内ルールで定めましょう。領収書があっても、私的な支出や重複申請が含まれている可能性があります。利用目的や参加者などを記録し、例外的な支出についても理由と承認履歴を残すことで、確認しやすくなります。
- 会計ソフトやインターネットバンキングは、担当者ごとに必要な権限を設定します。共通のIDやパスワードを使い回すと、操作した人を特定しにくくなります。利用者別のID、対応サービスでの多要素認証、退職・異動時の権限変更を徹底し、不適切な操作を防ぎましょう。
▼税理士のアドバイス
支払先の新規登録や口座変更は、不正な送金につながりやすいため、通常の振込とは別に確認手順を設けましょう。変更依頼のメールだけを信用せず、従来から把握している連絡先で取引先に確認する方法が有効です。また、少額の支払でも繰り返されれば損失は大きくなります。承認基準は金額だけで決めず、新規取引、口座変更、例外処理など、取引の内容も踏まえて設定することが大切です。
- 現金や預金の残高は、帳簿と実際の金額を定期的に照合しましょう。預金については、経営者や別の担当者が銀行明細を直接確認することが大切です。差額が出た場合は、単なる入力ミスと決めつけず、未処理の取引や不明な出金がないか、原因を確認して記録します。
- 月次決算では、売上や利益に加えて、経費、売掛金、在庫などの変化を確認します。売上が増えていないのに外注費だけが増える、入金済みのはずの売掛金が残るといった動きは、確認のきっかけになります。異常な数値だけで不正と判断せず、資料や取引内容を調べましょう。
- 従業員が業務上の違和感を相談できる窓口を設け、利用方法を周知しましょう。上司が関係する問題でも相談できる経路を用意することが大切です。相談者の情報を必要な範囲で管理し、不利益な取扱いを防ぐなど、安心して声を上げられる運用を整えます。
- 内部通報への対応では、相談・通報の受付だけでなく、調査、是正、通報者の保護まで含めた体制づくりが重要です。消費者庁も、情報管理や教育、記録保管、制度の見直しなどを示しています。消費者庁
▼税理士のアドバイス
早期発見には、決算時だけでなく、毎月の数字を継続して確認する習慣が役立ちます。月次報告では、前年同月や前月との比較に加え、内容が不明な支払、長期間残る仮払金、回収が遅れている売掛金などを確認しましょう。経理担当者が作成した一覧だけではなく、請求書や銀行明細と照合することも重要です。税理士による確認の範囲を共有し、社内の確認業務と組み合わせて運用してください。
- 経営者自身が社内ルールを守り、会社の支出と個人の支出を明確に分けることが重要です。経営者だけが証憑の提出や承認手続きを省略していると、ルールが形骸化しやすくなります。役員に関する支出も、事業上の目的や処理内容を記録し、説明できる状態にしましょう。
- 業務の属人化を防ぐため、手順書の整備や定期的な引継ぎを進めましょう。担当者が休んでも業務を継続できる体制は、事業運営の安定に加え、処理内容を別の人が確認する機会にもなります。担当変更や休暇取得を、特定の人を疑う対応ではなく、通常の運用として定着させます。
- 不正が疑われた場合は、関係する帳簿、証憑、メール、操作履歴などを適切に保全し、事実関係を整理します。十分な確認をせずに本人を問い詰めたり、社内へ情報を広めたりすることは避けましょう。調査、処分、会計・税務処理について、それぞれの専門家と対応を検討します。
▼税理士のアドバイス
不正が判明した際の会計・税務処理は、被害の内容、発生時期、回収の見込みなどによって判断が異なります。損失として計上すれば処理が完了するとは限らず、過去の決算や申告への影響も確認が必要です。税理士には取引資料と経緯を共有し、法的対応や従業員への処分は弁護士などと連携して進めましょう。原因が承認手順や権限設定にある場合は、その仕組みも見直すことが再発防止につながります。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
