役員に報酬や賞与を支払う

従業員に支払う給料や賞与は、税金計算上の費用に計上することができますが、役員へ支払う報酬や賞与は、費用として計上できない場合がありますので注意が必要です。
特に役員に支払う賞与は、費用に計上できない場合がある、というより費用として計上できる場合がある、といったほうが適切かもしれません。従業員を役員として処遇したばかりに、平役員を常務にしたばかりに、役員に会社の株をもってもらったばかりに…、報酬や賞与が税金計算上の費用にならなくなり、たくさんの税金を納めることになったという事は、本当にたくさんあります。
税金のことだけを考えて、人事を行うわけにはいきませんが、税金の規則を知らなかったことで、たくさんの税金をとられたのでは悔やんでも悔やみ切れないと思います。
ここで、役員の報酬と賞与についての税金のきまりをしっかりと押さえて下さい。

●税務署はここをチェックする(役員報酬)
毎月、定額で支払われる役員報酬は、税金計算上費用計上することができます。ただし、次のような役員報酬は、費用計上することができません。

  • 不適切な報酬
    役員報酬を働いていない親族(妻、親、兄弟、子供)に対して支払った。
  • 定款などに定めた支給限度額を超過している金額
    支給限度額を超えて役員報酬を増額したとき、取締役会または株主総会の議事録を作成しなかった。
  • 事業年度開始の日から3ヶ月を経過した日以降に増減した金額
    ※著しい業績悪化、役員の職制上の地位の変更などの特別なケースによる改訂を除く。
    中間決算をしたところ、業績がよかったので役員報酬を増額した。
    4月の従業員の昇給時期と同時期に役員報酬を増額した。
    ※4月~12月が決算月の会社は、役員報酬を4月に増額すると「事業年度開始の日から3ヶ月以内に増額」に該当しないので、増額した金額を費用計上することはできません。
  • オーナー社長の役員報酬の一部
    オーナー社長と書きましたが、正しくは「同族会社の業務主宰役員」といいます。次の2つの条件に該当する会社の社長のことをいいます。

その1 同族関係者が株式の90%以上を所有している
 社長80%・奥さん15%・従業員(他人)5%→該当する
 社長80%・奥さん5%・従業員(他人)15 %→該当しない
その2 同族関係者が常勤役員の過半数を占めている
 社長(常勤)・専務(社長の奥さん、常勤)・Bさん(他人、常勤)→該当する
社長(常勤)・Bさん(他人、常勤)→該当しない

このようなオーナー社長の役員報酬のうち給与所得控除額に相当する部分については税金計算上、費用計上することができません。給与所得控除額は役員の年収によって変わりますが、目安は次のとおりです。(基準所得が1600万円以下は対象外になるなどの取り扱いもあります。詳しくは国税庁のホームページを参照ください)
※この制度は平成22年4月1日以後に終了する事業年度から廃止されました。

●節税のホイント(役員賞与)
役員賞与は税金計算上の費用に計上することができません。ただし「使用人兼務役員の使用人分賞与」、「事前に税務署に届け出た賞与」については費用計上できます。節税のため、要件や手続きをしつかりと押さえておきましょう。

  • 使用人兼務役員の使用人分賞与
    使用人兼務役員とは、常時使用人としての職務に従事する役員をいいます。使用人兼務役員に対して支払う使用人の職務に対する賞与は、税金計算上の費用に計上することができます。
  • 使用人兼務役員の範囲とは
    使用人兼務役員は、使用人としての地位がある役員です。したがって次のような役員は使用人兼務役員になることができません。
    • 社長、常務、専務などの役付きの役員
      取締役営業部長が功績を上げたので常務取締役営業部長として処遇した。
    • 営業部長、工場長、営業所長など使用人としての職制上の地位がない役員
      取締役営業部長を、取締役営業担当として処遇した。
  • オーナーの同族関係者で、5%超(配偶者分を含む)の株式を所有している役員
    取締役営業部長(オーナーの配偶者)に賞与を支給した。
    取締役営業部長(オーナーの子供)が6% の株式を取得した。
  • 使用人としての職務に対する賞与とは
    費用計上で きる賞与は、使用人としての職務に対する部分に限られています。したがって、次のような賞与は、税金計算上の費用に計上することができません。
    • 使用人の賞与支給時に支給しなかった賞与
      従業員は6月と12月に賞与を支給 しているが、使用人兼務役員の賞与を3月に支給した。
    • 使用人賞与の額として適正な金額を超過している金額使用人兼務役員に対して支払った賞与の金額が同じような仕事をしている従業員に支給した賞与の金額を超えていた。

※適正な賞与金額の具体的な計算例
使用人兼務役員と従業員の「使用人分給与に対する賞与の比率(支給倍率)」を比較することで、使用人賞与としての適正な金額を算出します。具体的な算出方法は次のとおりです。

東京工場長(役員)月給50万円賞与200万円
大阪工場長(従業員)月給40万円賞与120万円

役員である東京工場長の賞与は月給の4倍ですが、従業員である大阪工場長の賞与は給与の3倍です。
東京工場長の賞与のうち3倍までの金額(50万円×3=150万円)までが、使用人としての適正な金額となります。従って、賞与のうち150万円を超えている金額(50万円)は、税金計算上の費用に計上できません。

  • 事前に税務署に届け出た賞与
    株主総会等で、役員に支払う賞与の金額と時期を定めている場合は、事前に税務署に届け出ることにより、税金計算上の費用にできるようになりました。この制度は平成18年4月1日以後開始の事業年度より適用されます。届出書の名称は「事前確定届出給与に関する届出書」です。所轄の税務署または国税庁のホームページからダウンロードできます。届出の期限は、賞与にかかる職務の執行を開始する日と事業年度開始の日か ら3ヶ月を経過した日とのいすれか早い日とされていましたが、平成19年度の改正で職務執行開始日から1 ヶ月を経過する日と事業年度開始の日から4ヶ月を経過した日とのいずれか早い日とされました。
    提出期限に遅れたり、届け出た賞与の金額と異なる金額を支払ったりすると、税金計算上の経費にできませんので注意してください。

●届出の期限

  • 通常の場合
    株主総会等で決議をした日から1月を経過する日になります。3月決算の会社を例に提出の期限を具体的に見てみましょう。
    5月25日に開催した株主総会で決議した場合
    届出の期限は5月25日から1月を経過する日、つまり6月25日となります。
  • 新設法人の場合
    設立をした日以後2月を経過する日になります。3月決算の会社を例に届け出の期限を具体的にみてみましょう。
    9月10日に設立した場合
    届出の期限は9月10日から2月を経過する日、つまり11月10日となります。

※実際の届出にあたっては所轄の税務署等に期日に誤りがないか確認をしてください。

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改正電子帳簿保存法は2022年1月に施行

電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電磁的記録(電子データ)等により、保存する時の方法について定めた法律です。

令和3年度税制改正では、電子帳簿保存法の大幅見直しが行われました。
事前申請の廃止やタイムスタンプ要件の見直し等の要件緩和が実施されるだけでなく、令和4年1月1日以後、電子取引は電子による保存が義務化となりました。これは、事業規模に係わらず企業・個人事業主が対象となります。
対応すべき範囲は想像以上に広く、早急な対策が必要です。

2021年12月10日、令和4年度税制改正大綱において、2022年1月1日に施行される改正電子帳簿保存法で「電子取引の取引情報に係る電磁的記録(PDFファイル等)」の出力書面による保存が認められないこととなっていた取り扱いを緩和する方針が示されました。
2023年(令和5年)12月31日までの2年間は、一定の要件下で引き続き電子取引を紙で保存することができるように経過措置を講ずるとのことです。
なお、一定の要件下とは、
  • 当該電子取引の取引情報を、電子帳簿保存法第7条が定める保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、やむを得ない事情があると認められること
    そして
  • 出力書面によって適切に保存していること(質問検査権に基づく書面の提示または提出の求めに応じられるようにしていること)
とされています。

参考:起業したらまっさきに読む経理の本(笠原清明著)
   株式会社インプレスコミュニケーションズ

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