起業したばかりの方から、「小さな会社でも税金の申告は必要ですか」「赤字なら申告しなくてもよいですか」というご質問をいただくことがあります。申告の必要性は、会社の規模や利益の有無だけでは判断できません。法人と個人事業主では取り扱いが異なり、税金の種類によっても手続きが変わります。今回は、税金の申告が必要な理由と、申告納税制度・賦課課税制度の違い、社会保険を含めた起業時の注意点を解説します。
- 株式会社や合同会社などの法人は、原則として会社の規模にかかわらず法人税の確定申告が必要です。社長一人で運営している会社や、売上が少ない会社であっても、それだけを理由に申告義務がなくなるわけではありません。
- 法人税の確定申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。起業後の最初の決算でも申告が必要になるため、設立時に決算日を確認し、帳簿の整理から申告書の作成までの予定を立てておくことが大切です。
- 個人事業主の場合は、所得金額や所得控除、税額などによって所得税の確定申告の必要性が決まります。法人とは判断基準が異なるうえ、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要になる場合があるため、区別して確認しましょう。
▼税理士のアドバイス
起業時には、「法人として設立するのか」「個人事業として始めるのか」を明確にしたうえで、必要な申告と届出を整理しましょう。法人税だけでなく、地方税や消費税についても個別の確認が必要です。事業用の口座を設け、請求書や領収書を毎月整理する習慣をつけると、決算直前の負担を軽減できます。会計ソフトの導入や記帳方法も、事業開始時に決めておくと安心です。
- 法人は、赤字決算であっても原則として確定申告が必要です。また、会計上の利益と税金を計算する際の所得は必ずしも一致しません。会計上は費用でも税務上は損金として認められないものがあるため、赤字だから税額もゼロとは限りません。
- 所得に対する法人税が生じない場合でも、法人住民税の均等割は原則として課税されます。横浜市でも、赤字決算の法人には法人市民税の申告と均等割の納付が必要です。利益に連動しない税負担も、資金計画に含めておきましょう。
- 赤字の年度に青色申告を行い、必要な条件を満たすことで、税務上の欠損金を翌期以降の所得から控除できる場合があります。この制度には継続した申告や帳簿書類の保存などの要件があるため、赤字の年も申告を適切に行うことが大切です。
▼税理士のアドバイス
赤字のときこそ、申告義務と納税額を分けて確認することが大切です。消費税の課税事業者であれば、利益が出ていなくても消費税の納付が必要になる場合があります。また、個人事業主は事業以外の所得も含めて申告の要否を判断します。決算書の赤字だけで結論を出さず、税務上の所得、均等割、消費税、欠損金の取り扱いを確認し、必要な納税資金を早めに把握しましょう。
- 申告納税制度とは、納税者が自ら所得や税額を計算し、申告によって納める税金の額を確定させる仕組みです。所得税、法人税、消費税などで採用されています。税務署から税額の通知が届くのを待つのではなく、自ら手続きを行います。
- 正しい申告には、日々の取引を記録した帳簿と、請求書や領収書などの根拠資料が欠かせません。売上や経費を漏れなく把握し、必要な税務上の調整を行って税額を計算します。会計ソフトを使う場合も、入力内容の確認が必要です。
- 申告書の提出と税金の納付は、それぞれ別の手続きです。申告を済ませても、納付が自動的に完了するとは限りません。申告期限と納付期限、利用する納付方法を確認し、期限までに必要な手続きを終えられるよう準備しましょう。
▼税理士のアドバイス
申告納税制度では、日常の経理の積み重ねが申告の正確さにつながります。決算時にまとめて処理するより、毎月の売上、経費、預金残高を確認する方法がおすすめです。顧問税理士による月次確認や記帳代行を活用する場合も、資料の提出時期と担当範囲を決めておきましょう。納税見込み額を定期的に把握し、運転資金とは別に納税資金を確保すると、資金繰りの安定にも役立ちます。
| 区分 | 主な税金 |
| 国税 | 所得税、法人税、消費税、相続税、贈与税 |
| その他の国税の例 | 酒税、揮発油税など |
| 地方税 | 法人住民税(法人県民税・法人市民税など)、法人事業税、事業所税など |
- 賦課課税制度とは、行政機関が課税に必要な情報をもとに税額を決定する仕組みです。代表的なものに固定資産税や個人住民税があります。納税者が税額を計算して確定させる申告納税制度とは、税額を決める主体が異なります。
- 行政機関が税額を決める場合でも、納税者からの申告や資料の提出が不要とは限りません。例えば、事業用の機械や備品などの償却資産については、毎年1月1日現在の所有状況を、原則として1月31日までに申告する必要があります。
- 個人住民税は、所得税の確定申告書や給与支払報告書などの情報をもとに、市区町村が税額を決めます。所得税の確定申告をしていない方は、別途住民税の申告が必要になる場合があるため、自治体の案内を確認することが大切です。
▼税理士のアドバイス
賦課課税制度は、「行政機関が税額を決めるので、何もしなくてよい」という制度ではありません。事業用資産を購入・売却・廃棄したときは、その内容を記録し、償却資産の申告対象になるか確認しましょう。また、法人住民税は個人住民税と異なり、法人が自ら申告する税金です。同じ「住民税」という名称でも手続きが違うため、税目ごとに申告の有無と納付方法を整理することが大切です。
- 起業時には、税金の申告とあわせて社会保険の手続きも確認しましょう。健康保険・厚生年金保険では、事業主のみの場合を含む法人事業所は原則として強制適用となります。役員報酬や働き方などを踏まえ、加入対象者と必要な届出を確認します。
- 税金の申告・納付と、社会保険の加入・保険料納付は、それぞれ別の制度です。赤字で法人税の納付が生じなくても、社会保険料の負担がなくなるわけではありません。起業時の資金計画には、税金と会社負担の保険料を織り込みましょう。
- 期限内の申告や納付を怠ると、無申告加算税や延滞税などが発生する場合があります。申告書の提出と納税資金の準備を後回しにせず、税目ごとの期限を管理しましょう。資金不足が見込まれるときも、申告せずに放置しないことが大切です。
▼税理士のアドバイス
起業後の手続きは、税務署、自治体、年金事務所など、提出先が複数に分かれます。必要な届出、申告期限、納付期限を一覧にし、担当者と確認日を決めておくと漏れを防ぎやすくなります。税務・会計は税理士、社会保険の加入や届出は年金事務所や社会保険労務士など、内容に応じて確認先を使い分けましょう。毎月の経理と給与計算を整えることが、適切な申告と安定した経営につながります。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
当事務所では、会計ソフトの導入支援を行っています。
会計ソフトで入力なんて不安と思われる方もいらっしゃると思いますが当事務所でしっかりとサポートしますので安心してください。
実際会計ソフトを導入された方のほとんどが、ソフトを導入して良かったとおっしゃっています。
定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
