企業の会社経営では、売上を立てることだけでなく、売掛金を確実に回収することが資金繰りを守る重要なポイントです。取引先の支払い遅延を放置すると、貸倒れにつながる場合があります。日頃の与信管理から入金遅延時の対応まで、実務で確認したいポイントを解説します。
- 売掛金の貸倒れとは、商品やサービスを提供したにもかかわらず、取引先から代金を回収できなくなる状態をいいます。企業にとっては利益だけでなく、資金繰りにも大きな影響を与える問題です。
- 売上が計上されていても、実際に入金されなければ手元資金は増えません。仕入代金、給与、家賃、税金などの支払いは続くため、貸倒れが発生すると会社経営に深刻な負担となる場合があります。
- 貸倒損失として税務上処理できるかどうかは、債権の状況や回収不能となった事情などにより判断が異なります。国税庁も売掛金などを貸倒損失の対象となり得る金銭債権として示していますが、個別確認が必要です。
▼税理士のアドバイス
貸倒れを防ぐには、売上計上後の入金確認を経理任せにせず、経営者自身も未回収残高を定期的に把握することが大切です。月次決算や月次報告を活用し、売掛金の滞留期間を早めに確認できる体制を整えておくと、資金繰り悪化の予防につながります。
- 取引先の経営状況が悪化している兆候を早めに把握することは、貸倒れ防止に役立ちます。支払い遅延の増加、担当者の退職、連絡の遅れ、取引条件の急な変更依頼などは注意すべきサインです。
- 新規取引や大口取引を始める際は、登記情報、決算公告、信用調査会社の情報、過去の取引実績などを確認する方法があります。特に掛取引を行う場合は、事前の与信判断が重要です。
- 既存取引先であっても、長年の関係だけで安心するのは危険です。業績悪化、業界環境の変化、資金調達の停滞などにより、急に支払い能力が低下する場合があるため、定期的な見直しが必要です。
▼税理士のアドバイス
売掛金の管理では、取引開始前の審査だけでなく、取引開始後の変化を確認することが重要です。会計ソフトや販売管理システムで取引先別の未回収残高を確認し、一定額を超える取引には社内承認を設けるなど、会社経営に合ったルール作りをおすすめします。
- 入金予定日を過ぎても支払いがない場合は、まず請求書の送付漏れ、振込先の誤り、取引先側の事務処理遅れなどを確認します。初期段階では、感情的にならず事実確認を丁寧に行うことが大切です。
- 入金遅延が確認できたら、電話やメールで支払予定日を確認し、やり取りの記録を残しておきます。口頭だけで済ませると後日トラブルになる場合があるため、日時、担当者、回答内容を整理しておきます。
- 何度も支払いが遅れる取引先については、掛取引の停止、前金取引への変更、取引限度額の引き下げなどを検討します。回収見込みが不透明なまま取引を続けると、未回収額が膨らむおそれがあります。
▼税理士のアドバイス
入金遅延が発生した際は、早期対応が非常に重要です。月次決算で未回収債権を確認し、遅延日数ごとに対応方法を決めておくと、担当者任せによる対応漏れを防げます。記帳代行や経理体制の見直しとあわせて、回収管理の仕組みを整えることが大切です。
- 取引先が一括払いできない場合は、返済計画書を作成し、支払総額、分割回数、各回の支払日、支払方法を明確にします。曖昧な約束のままにすると、再度の遅延や未払いにつながる場合があります。
- 返済計画書には、債権額の内訳、既払額、残額、遅延時の対応などを記載しておくと、後日の確認がしやすくなります。双方の認識をそろえるため、書面や電子データで記録を残すことが重要です。
- 分割払いを認める場合でも、取引先の資金状況に無理がある計画では実行されない可能性があります。現実的な返済能力を確認しながら、必要に応じて専門家へ相談することが望ましいです。
▼税理士のアドバイス
返済計画書を作成する際は、単に支払予定を決めるだけでなく、自社の資金繰りへの影響も確認しましょう。入金時期が後ろ倒しになると、消費税や法人税、給与、仕入代金の支払いに影響する場合があります。資金繰り表とあわせて管理することが重要です。
- 通常の連絡で支払いが進まない場合、内容証明郵便を利用して請求の意思を明確に示す方法があります。内容証明は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰へ差し出したかを日本郵便が証明する制度です。
- 内容証明郵便を送付することで、取引先に対して正式な請求であることを伝えやすくなります。ただし、内容証明そのものに強制的に回収する効力があるわけではないため、次の対応も検討が必要です。
- 記載内容によっては、相手方との関係悪化や法的な論点が生じる場合があります。請求金額、支払期限、振込先、今後の対応方針などを整理し、必要に応じて弁護士などの専門家に確認しましょう。
▼税理士のアドバイス
内容証明郵便を検討する段階では、税務上の貸倒処理だけでなく、回収可能性や取引継続の判断も重要です。経理資料、請求書、契約書、納品書、入金履歴を整理しておくと、税務相談や法的手続きに進む場合にも状況を説明しやすくなります。
- 支払督促は、金銭などの支払いを求める場合に、債権者の申立てにより裁判所が督促を発する手続きです。通常の訴訟より簡易な方法として利用されることがありますが、要件や手続きの確認が必要です。
- 相手方が支払督促を受け取った後、一定期間内に異議を申し立てない場合は、仮執行宣言の申立てに進むことができます。一方で、異議が出ると通常の民事訴訟手続きへ移行する場合があります。
- 支払督促を利用するかどうかは、請求額、証拠資料、相手方の所在、争いの有無などを踏まえて判断します。相手が債務を認めていない場合や反論が想定される場合は、慎重な検討が必要です。
▼税理士のアドバイス
支払督促を検討する前に、売掛金の発生根拠を示す資料がそろっているか確認しましょう。契約書、注文書、納品書、請求書、入金履歴が整理されていないと、回収対応だけでなく決算申告時の貸倒判断にも影響する場合があります。
- 話し合いや督促で回収できない場合、訴訟を検討することがあります。請求額や争点、証拠の有無によって適した手続きは異なるため、費用対効果を確認しながら判断することが大切です。
- 少額訴訟は、比較的少額の金銭請求について利用される簡易裁判所の手続きです。裁判所の案内では、判決や和解調書等に基づく少額訴訟債権執行についても説明されています。
- 訴訟を行う場合は、時間、費用、相手方の支払能力も考慮する必要があります。勝訴しても相手に資力がなければ回収が難しい場合があるため、法的手続きの前に回収可能性を見極めることが重要です。
▼税理士のアドバイス
訴訟や少額訴訟を検討する段階では、会計上・税務上の処理も同時に確認しましょう。回収活動の記録は、将来的に貸倒損失を検討する際の資料になる場合があります。税理士と連携し、決算申告への影響も早めに把握することが大切です。
- 貸倒れを防ぐには、取引開始時の契約書整備が欠かせません。支払条件、支払期限、遅延時の対応、所有権や納品確認の方法などを明確にしておくことで、トラブル時の対応がしやすくなります。
- 売掛金管理は、経理担当者だけでなく営業担当者とも連携する必要があります。営業現場が取引先の変化を把握している場合も多いため、入金状況と顧客情報を共有する仕組みを作ることが重要です。
- 会計ソフトや販売管理システムを活用すると、請求漏れ、入金消込漏れ、滞留債権の見落としを減らしやすくなります。自計化支援や記帳代行を活用し、経理体制を整えることも有効です。
▼税理士のアドバイス
貸倒れ対策は、回収不能になってから考えるのではなく、日頃の経理体制づくりから始まります。月次決算、資金繰り表、売掛金年齢表を活用し、未回収債権を早期に把握することが大切です。必要に応じて顧問税理士へ相談し、会社経営に合った管理方法を整えましょう。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
当事務所では、会計ソフトの導入支援を行っています。
会計ソフトで入力なんて不安と思われる方もいらっしゃると思いますが当事務所でしっかりとサポートしますので安心してください。
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
