企業の取引では、売掛金や貸付金が回収できなくなる「貸倒れ」が発生する場合があります。貸倒れは資金繰りに大きく影響するだけでなく、税務処理や証拠書類の整備にも注意が必要です。会社経営において、早めの対応と専門家への確認が大切です。
- 倒産とは、会社や個人事業主が資金繰りに行き詰まり、支払期日までに債務を弁済できない状態を指します。法律上の破産だけでなく、実務上は支払停止や事業停止も含めて考える場合があります。
- 取引先が倒産すると、売掛金や貸付金などの債権を回収できない可能性が高まります。会社経営では、相手先の支払遅延や連絡不能などの兆候を早めに把握することが重要です。
- 倒産には、破産、民事再生、会社更生、特別清算など複数の手続があります。どの手続に該当するかにより、債権回収の見込みや税金上の貸倒れ処理の判断が異なる場合があります。
▼税理士のアドバイス
取引先の倒産情報を把握した場合は、売掛金の残高、請求書、契約書、入金履歴を早めに確認してください。貸倒損失として処理できるかは、法的手続や回収不能の事実関係により判断が分かれるため、決算前に税理士へ相談することが大切です。
- まずは請求書の再送付、支払期日の確認、電話やメールでの督促を行い、相手方の支払意思や資金状況を確認します。口頭だけでなく、やり取りの記録を残すことが大切です。
- 分割払い、支払猶予、債務承認書の作成などにより、回収可能性を高められる場合があります。ただし、安易な条件変更は回収時期を遅らせることもあるため慎重な判断が必要です。
- 任意交渉で回収が難しい場合は、内容証明郵便、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、強制執行などの法的手続を検討します。費用対効果を踏まえて対応方針を決めることが重要です。
▼税理士のアドバイス
債権回収では、回収努力を行った証拠を残すことが税務上も重要です。督促状、内容証明、交渉記録、相手先の財産状況などは、貸倒れ処理の根拠資料になる場合があります。金額が大きい場合は、弁護士や司法書士との連携も検討してください。
- 商品を取り戻す方法は、未回収代金に対応する商品が相手先に残っている場合に検討します。ただし、所有権の所在や契約条件により対応が異なるため、無断で持ち帰ることは避ける必要があります。
- 代物弁済は、金銭での支払いが難しい相手先から、商品、備品、不動産など別の財産を受け取って債権の弁済に充てる方法です。評価額や消費税、会計処理の確認が必要になる場合があります。
- 債権譲渡は、売掛金などの債権を第三者へ譲渡し、回収や資金化を図る方法です。譲渡制限特約、債務者への通知、対抗要件の確認が必要で、譲渡損が生じる場合の税務処理にも注意します。
- 相殺は、相手先に対する売掛金と、こちらが相手先へ支払う買掛金などを差し引く方法です。双方の債権債務の内容、弁済期、契約上の制限を確認し、相殺通知などの証拠を残すことが大切です。
- 仮処分や仮差押えは、相手先が財産を処分してしまうおそれがある場合に、裁判所を通じて財産の保全を図る手続です。民事保全法では仮差押えや仮処分が民事保全として定められています。
▼税理士のアドバイス
債権回収では、どの方法を選ぶかにより会計処理や税務上の判断が変わる場合があります。商品回収、代物弁済、債権譲渡、相殺を行う際は、契約書、通知書、評価資料、入出金記録を整理し、貸倒れ処理との関係も含めて税理士へ確認することが重要です。
- 法人税上、貸倒損失として損金算入できるかは、法律上の債権切捨て、事実上の回収不能、一定期間の取引停止など、状況に応じて判断されます。国税庁も具体的事実により課税関係が異なる場合があると示しています。
- 取引先の破産手続や再生計画により債権が切り捨てられた場合は、一定の要件のもとで貸倒損失として処理できる場合があります。手続書類や裁判所関係の通知は必ず保管しておく必要があります。
- 消費税では、課税売上に係る売掛金等が貸倒れとなった場合、一定の要件のもとで貸倒れに含まれる消費税額を控除できる制度があります。後日回収した場合には、回収額に応じた調整が必要です。
▼税理士のアドバイス
貸倒れ処理は、単に「回収できそうにない」という判断だけでは不十分な場合があります。決算申告で否認されないためには、債権の発生原因、回収努力、相手先の状況、法的手続の有無を整理し、法人税・消費税の両面から確認することが重要です。
- 相手先の支払いが遅れているだけで、事業を継続している場合や財産が残っている場合は、直ちに貸倒れとは判断できないことがあります。単なる入金遅延と貸倒れは区別して考える必要があります。
- 取引先との関係維持を目的に債権放棄をした場合でも、合理的な理由や手続が不足していると、税務上の貸倒損失として認められない場合があります。寄附金や役員関係取引とみなされるリスクにも注意が必要です。
- 回収不能を示す客観的な資料がないまま貸倒処理を行うと、税務調査で損金算入を否認される可能性があります。債務者の資産状況、督促経緯、取引停止時期などの確認が欠かせません。
▼税理士のアドバイス
法律上または税務上の貸倒れに該当しない段階では、貸倒引当金の検討や債権管理の強化が必要になる場合があります。特に同族会社間や関係会社間の債権放棄は判断が複雑になりやすいため、事前に税理士へ確認してください。
- 貸倒れを防ぐには、取引開始時の与信管理が重要です。登記情報、決算情報、支払実績、取引条件を確認し、必要に応じて前受金や保証金、取引限度額を設定することが有効です。
- 売掛金の滞留を早期に発見するためには、月次決算や月次報告で債権残高を確認する体制が役立ちます。会計ソフトを活用し、入金予定と実際の入金状況を継続的に管理することが大切です。
- 記帳代行や経理業務を外部に依頼している場合でも、請求・入金・督促の流れは社内で共有しておく必要があります。給与計算や資金繰りにも影響するため、未回収債権は早めに対策を講じましょう。
▼税理士のアドバイス
貸倒れは利益だけでなく資金繰りにも影響するため、発生後の処理だけでなく予防策が重要です。月次決算、記帳代行、会計ソフト導入支援、自計化支援を活用し、売掛金の管理体制を整えることで、会社経営の安定につながります。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
