中小企業では、社長個人と会社の間で一時的に資金を立て替えたり、会社から社長へ貸付が発生したりすることがあります。会社経営上よくある取引ですが、契約書や金利、返済状況が不明確なまま放置すると、税務調査や決算申告で問題になる場合があります。
- 社長と会社の貸し借りとは、会社が社長へ資金を貸す「役員貸付金」や、社長が会社へ資金を入れる「役員借入金」などを指します。会社経営では一時的に発生することがあります。
- たとえば、会社の資金繰りが厳しい時期に社長個人が会社へ資金を入れた場合や、社長の個人的な支出を会社が立て替えた場合などに、貸し借りの関係が生じます。
- 会社と社長は法律上別人格であるため、たとえオーナー企業であっても、資金移動を曖昧に処理することは避ける必要があります。経費、給与、貸付金の区分が重要です。
- 社長への無利息または低利の貸付は、通常取得すべき利息との差額が経済的利益として扱われる場合があります。税務上の判断は、金額や実態の確認が必要です。
▼税理士のアドバイス
社長と会社の資金移動は、日々の経理処理で曖昧になりやすい項目です。領収書、通帳、振込明細を確認し、会社経費なのか、役員貸付金なのか、役員借入金なのかを月次で整理することが大切です。
- 社長と会社の間で貸付金や借入金が発生する場合は、金銭消費貸借契約書を作成し、貸付日、金額、返済期限、返済方法、利率などを明確にしておくことが重要です。
- 契約書がないまま長期間残高が残ると、税務調査で「本当に返済意思がある貸付なのか」を確認される場合があります。口頭だけの約束では、実態を説明しにくくなります。
- 返済予定表を作成し、毎月または一定期間ごとに返済実績を残すことで、会社と社長の取引が実態のある貸し借りであることを示しやすくなります。
- 役員貸付金が多額になると、金融機関からも資金管理に課題があると見られる場合があります。融資や資金調達を考える企業では、決算書上の見え方にも注意が必要です。
▼税理士のアドバイス
契約書は形式だけでなく、実際の返済状況と一致していることが大切です。契約書を作成していても返済がまったく行われていない場合、税務上の説明が難しくなることがあります。月次決算で残高を確認しましょう。
- 会社が社長に資金を貸す場合は、無利息や極端に低い利率にすると、通常取得すべき利息との差額が社長への経済的利益として扱われる場合があります。
- 会社が金融機関などから借り入れた資金を社長へ貸す場合は、その借入利率を参考にする方法があります。会社の平均調達金利など、合理的な利率設定が重要です。
- 会社が社長に貸す場合、一定の利率で計算した利息と実際の利息との差額が少額であれば、課税しなくて差し支えない取扱いもあります。ただし、条件確認が必要です。
- 社長が会社に資金を貸す場合は、会社側では役員借入金として処理することが一般的です。無利息であっても直ちに問題になるとは限りませんが、契約内容と返済予定を明確にしておくことが大切です。
- 社長が会社から利息を受け取る場合、その利息は社長個人の所得として申告が必要になる場合があります。会社側では支払利息として処理できるか、実態に応じた確認が必要です。
▼税理士のアドバイス
金利は、会社が社長に貸す場合と社長が会社に貸す場合で注意点が異なります。特に会社から社長への貸付は、認定利息や役員給与の問題につながる場合があります。契約書、利率、返済実績を月次で確認しましょう。
- 社長に対する仮払金が長期間精算されていない場合、実質的には社長への貸付金と見られることがあります。決算時だけでなく、月次で内容を確認することが重要です。
- 仮払金の内容が、出張旅費、交際費、備品購入など会社業務に関するものか、社長個人の支出なのかを整理する必要があります。証憑がない場合は説明が難しくなります。
- 長期未精算の仮払金が残っていると、経費として認められるか、役員貸付金へ振り替えるべきか、役員給与とされる可能性がないかなど、複数の論点が生じます。
- 同族会社の代表者等に対する仮払金や貸付金については、認定利息の問題が生じる場合があります。未収金処理だけで済むとは限らず、実態の確認が必要です。
▼税理士のアドバイス
仮払金は「あとで精算するもの」として放置されがちですが、長期化すると税務調査で重点的に確認されることがあります。領収書の回収、精算期限の設定、役員貸付金への振替判断を早めに行いましょう。
- 社長と会社の貸し借りは、法人税、所得税、消費税、地方税の申告だけでなく、金融機関の融資審査や会社の信用力にも影響する場合があります。決算前の確認が大切です。
- 役員貸付金が増える背景には、会社口座と個人口座の混在、経費精算の遅れ、役員報酬の設定不足などがあります。原因を確認し、経理体制を整えることが重要です。
- 会計ソフトを導入していても、勘定科目の使い方が不適切だと正しい残高管理ができません。記帳代行や自計化支援を活用し、月次で残高を把握する体制が必要です。
- 役員貸付金や仮払金を整理する際は、返済計画、役員報酬の見直し、資金繰り、決算申告への影響を総合的に検討する必要があります。個別事情に応じた判断が大切です。
▼税理士のアドバイス
社長と会社の貸し借りは、単なる経理処理ではなく、会社経営全体の資金管理に関わる重要な項目です。顧問税理士による月次報告を活用し、貸付金や仮払金を早期に把握する仕組みを整えましょう。
■参考書籍■
【独立希望者必見】面白いほど理解できる(税理士が教える)起業・会社経営Q&A
酒井敏行/松本有史/箕輪俊之/岩木功 箸
TAC株式会社出版事業部 発行
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定額減税と確定申告
令和6年度税制改正に伴い、令和6年分所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。
定額減税の概要は以下のとおりです。
詳しくは、国税庁の定額減税についてのページをご覧ください。
- 定額減税の対象となる方
定額減税の対象者は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(注)である方)です。
(注) 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下となります。 - 定額減税額(令和6年分特別税額控除の額)
特別控除の額は、次の金額の合計額です。
ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、控除される金額は、その所得税額が限度となります。
| 所得税 | 個人住民税 | |
| 本人分 | 3万円 | 1万円 |
| 同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
詳しくは、国税庁の定額減税と確定申告ページをご覧ください。
特別控除は、所得の種類によって、次の方法により実施されます。
- 給与所得者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与等に限ります。)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合は、年末調整により調整することとなります。
また、次の1~3に該当する場合などは、令和6年分の確定申告において最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。- 主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超えるとき
- 年の途中で退職し、給与等に係る源泉徴収について特別控除の額の控除が行われていない(又は控除しきれない額がある)とき
- 年末調整において、所得税額から特別控除の額を控除した際、控除しきれない額が生じる場合(特別控除の額が所得税額を上回る場合)において、次に該当するとき
- 給与所得以外の所得があるとき
- 退職所得に係る源泉徴収税額があるとき
- 2か所以上から給与の支払を受けているとき
- 公的年金等の受給者に係る特別控除
令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除きます。)につき源泉徴収をされるべき所得税等の額から特別控除の額に相当する金額が控除されます。これにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
なお、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載した事項の異動等により、特別控除の額が異動する場合(例えば、令和6年中に扶養親族の人数が増加した場合など)は、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)において、最終的な特別控除の額を計算の上、納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することとなります。
※給与と公的年金等に係る両方の所得を有する方は、還付申告となる場合や年金所得者に係る申告不要制度(注)の適用がある場合で確定申告をしないときを除き、確定申告において、所得税額から最終的な特別控除の額や源泉徴収税額等を差し引いて納付すべき又は還付される所得税の金額を精算することになります。
(注)年金所得者の申告不要制度…次のいずれにも該当する場合に、計算の結果、納税額がある場合でも、所得税等の確定申告は必要ありません。(注1・2)- 公的年金等の収入金額が400万円以下(注3・4)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
(注1)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。(注2)所得税等の確定申告が必要ない場合でも、一定の要件に該当する場合には、還付を受けるための申告(還付申告)を行うことで税金が還付されます。
(注3)源泉徴収を要しない公的年金等の規定(所得税法第203条の7)の適用を受けるものを除きます。
(注4)一定の外国年金が国外で支払われる場合などには、源泉徴収の対象となりません。
- 事業所得者等に係る特別控除
原則として、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に所得税の額から特別控除の額が控除されます。
予定納税の対象となる方については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)(注)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額が控除されます。
なお、同一生計配偶者または扶養親族に係る特別控除の額に相当する金額については、予定納税額の減額申請の手続により特別控除の額を控除することができ、第1期分予定納税額から控除しきれなかった場合には、控除しきれない部分の金額を第2期分予定納税額(11月)から控除します。
また、確定申告による精算に関する情報は、随時国税庁ホームページにて更新を行っていきます。
(注)特別農業所得者(農業所得の金額に係る一定の要件を満たすものとして申告等をしている方)については、第2期分予定納税額(11月)となります。
お問合せ・ご相談はこちらからどうぞ
045-869-0337
営業時間 : 9:30〜18:00《土日祝休日》
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
